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喫煙とがんの関連については、これまで動物実験や疫学研究など、さまざまな研究が行われてきました。 これらは、1964年に発表された米国公衆衛生総監報告をはじめとして、世界各国で数多く報告されています。 これらの報告の中で、肺がん、食道がん、膵臓がん、口腔・中咽頭・下咽頭がん、喉頭がん、腎盂・尿管がん、 膀胱がんについては、喫煙との間に因果関係があると解釈されています。これらの部位のがんでは、喫煙との 関連の大きさが相対リスク(非喫煙者と比べた場合の喫煙者でのがんの危険性)として2倍以上の値を示して おり、喫煙との因果関係があると判断する十分な根拠があります。また、子宮頸部がんは多くの疫学研究で 喫煙との関連が示されていますが、最も重要な危険因子である、ある種のウイルス(パピローマウイルス)感染 の影響を除いた場合の関連については専門家の間でも議論があります。 喫煙と弱い関連(おおむね相対リスクとして2倍以下)があるがんとしては、腎細胞がん、胃がん、肝がん、 白血病(特に骨髄性)があります。また、関連があると考えられますが、まれながんのため結論を明確に 出せない部位として、口唇がん、鼻腔副鼻腔がん、上咽頭がんがあります。また、大腸がん、女性の乳がんに ついては、これまでは関連がないと考えられてきましたが、最近関連があるのではないかと専門家の間でも 議論が続いています。 たばこの煙の中には、多環芳香族炭化水素などの約20種類の発がん物質が含まれています。発がん 物質の 多くは、体内で活性型に変化したのち、DNAと共有結合をしてDNA付加体を形成します。このDNA 付加体が DNA複製の際に、遺伝子の変異を引きおこします。こうした遺伝子変異が、がん遺伝子、がん 抑制遺伝子、 DNA修復遺伝子などにいくつか蓄積することによって、細胞ががん化すると考えられてい ます。喫煙者の 肺がん患者さんの肺がん細胞には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に変異が多く認め られます。 また、多環芳香族炭化水素がDNA付加体を形成する位置に一致して、遺伝子変異が認めら れます。 喫煙者に生じた肺がんでは、こうした遺伝子変異が非喫煙者の肺がんよりも多くみられ、悪性度が高いことが 知られています。 |
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